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第52話 水面下で交わる視線

مؤلف: marimo
last update تاريخ النشر: 2026-03-09 20:36:48

その店は、都心から少し外れた場所にあった。

 表通りから一本入った静かな通りに、控えめな看板だけが掲げられている。知らなければ通り過ぎてしまうような場所だ。

 会員制のラウンジ。

 重厚な扉の向こうには、外界とは切り離されたような落ち着いた空間が広がっている。

 外からは中の様子がうかがえず、照明も音も、すべてが控えめに設計されている。

 間接照明が柔らかく壁を照らし、低く流れる音楽が空気に溶け込んでいる。

 ここに集まる客たちは、誰も声を張り上げない。

 秘密を守る場所という空気が、自然と人の振る舞いを静かにさせていた。

 南條沙耶は、奥のソファに腰を下ろし、足を組み替えながら、グラスに入ったシャンパンを軽く揺らしていた。

 淡い金色の液体が、グラスの中でゆっくりと波打つ。

 艶のあるマニキュアを施した指先が、照明を反射する。

 深い色合いのネイルは、完璧に整えられていた。

 指先の動きひとつまで、計算されたように美しい。

 沙耶は、ゆったりと背もたれに身体を預けながら、店内の静けさを眺めていた。

 人の気配はあるのに、騒がしさはない。

 こういう場所は、嫌いではない。

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